床仕上げ:フローリング
標準スチール製書架 |
標準木製書架 |
両面全傾斜書架(5段) |
両面全傾斜書架(4段) | |
ローリング |
× |
○ |
○ |
○ |
スウェイ |
△ |
○ |
× |
× |
書籍重量(s) |
290.0 |
301.0 |
346.5 |
293.5 |
書籍落下量(%) |
68.2 |
84.7 |
0.0 |
0.0 |
床仕上げ:タイルカーペット
標準スチール製書架 |
標準木製書架 |
両面全傾斜書架(5段) |
両面全傾斜書架(4段) | |
ローリング |
× |
○ |
△ |
△ |
スウェイ |
△ |
○ |
△ |
△ |
書籍重量(s) |
290.0 |
301.0 |
346.5 |
293.5 |
書籍落下量(%) |
64.9 |
85.3 |
15.1 |
11.5 |
@転倒
書架が倒れる挙動を示す。高さに対して、奥行きの比率が比較的小さいものにみられる。
Aローリング(足踏み)
ほぼ移動せず、書架の底面あるいは脚部が浮き、ガタガタと音を立てて足踏みをするような様子で揺れる挙動を指す。規模によっては転倒につながる挙動といえる。
B構成部材の部分落下
書架の一部(棚板等)が落ちる挙動を指す。二段積みの上段書架の落下等も含む。
C書籍の落下
書籍やブックエンドのような、書架に載っているものが振り落される挙動を指す。
Dスウェイ(移動)
書架が定位置から移動する挙動を指す。転倒しにくい寸胴な形状、もしくは重心が下方にあるものに起こりやすく、床仕上げにも影響を受ける。
E変形
激しい揺れにより書架の形状が変わる挙動を指す。
表2.実験時の書架の挙動
フローリング |
カーペット |
|
標準スチール製書架 |
@ A B C D E |
@ A C D E |
標準木製書架 |
C |
B C |
木製両面全傾斜書架(5段) |
D |
A C D |
木製両面全傾斜書架(4段) |
D |
A C D |
考察
加震時に挙動の種類が多く見られたのは標準スチール製書架であった。ローリングやスウェイ、変形が合わせて観察されたため、書架の転倒や自壊のリスクは極めて高いといえる。
標準木製書架に関しては、加震時の挙動の種類からみて、自壊には至らないと思われる。しかし、表1で示したように標準スチール製書架よりも書籍の落下量は多く、一概に「耐震」性能を比較することはできない。棚板の落下に関しては、取り外し可能なものであるため自壊、または自壊に至る挙動であるとはいえないが、落下による直接被害を考慮する必要がある。
続いて、傾斜書架に関しては、書架の挙動、書籍の落下ともにほとんど発生が見受けられない。標準木製書架同様、挙動の種類も少なく、書架の自壊には至らないと考えられる。しかし、床仕上げがフローリング時にはスウェイが、カーペット時にはローリングと書籍の落下が発生している。棚板の落下に関しては、書架本体との一体性があるため発生しない。
ここで特に注目したいのが、傾斜書架のフローリング時の挙動と、他の書架との違いである。フローリング時の傾斜書架はスウェイを示したが、これはがたつきのないすべり移動であった。また、書架の剛性が十分なこと、書籍の落下が見られないことの2点が表2から判断できる。これらのことから、水平移動によって免震のような現象が生じ、結果として書籍落下防止・書架転倒防止効果につながったと考えられる。対して、標準スチール製書架は、足踏みを伴った移動、つまりロッキングが発生しており、書架への負荷が大きく、剛性の低さも相まって、書籍の落下や転倒を促進したと考えられる。