日本では近い将来確実に、大地震が起きると言われています。
建築業に携わる人は、その時、“自分が関わった建物の崩壊”を経験するかもしれません。
崩壊により、死傷者が出てしまうかもしれません。
その時、建物がどのような地震を受け、その結果どのような揺れ方をし、どのように破壊するのか、
私達は知っておくべきなのではないでしょうか。
その昔、バビロンのハムラビ法典では、「建築物が原因で依頼者が死んだ場合は、 建築者を死刑に処す。」という法律があったそうです。
本来建築に関わるというのはそれぐらい責任のあることなのです。ですから耐震工学は、構造の得意な学生はもちろんのこと、 授業を履修していないその他の学生にとっても、勉強しておいて欲しい学問なのです。
難しい学問なので、完全に理解することはできないかもしれません。 しかし、初歩的な部分だけでも学び、 社会へ出てからその工学的な考え方を設計などに生かしていくことができれば、 将来、建築家としての価値は必ず高まります。
構造系の学問を専攻している学生は、完全に習得する為のステップとして、 その他の学生は、将来自らが携わるであろう建物の揺れを容易に把握する為の読み物として、ぜひ活用していって下さい。
以下に、振動に対する配慮が無かった為に生じた問題と、 振動理論に基づけばどのような対策が可能となるのかの具体的な例を述べます。
1940年11月7日、ワシントンのタコマ橋(全長853mのつり橋)がわずか風速19m/sの風で落橋しました。 当時はつり橋の空気力学的な不安定性について予想されていなかった為に、 つり橋に異常な大きさの“ねじれ振動”が生じて落橋したものです。現在では風洞実験によりその安定性は確かめられています
大人の男の人が力一杯押しても動かない程の重さの、釣鐘を思い浮かべて下さい。 それを、力の無い少年が何回も繰り返し押すことで、揺らす事ができたという話があります。 これは“共振”という現象を利用したものです。
これで、振動についての知識が色々なところで使われているということを、ある程度は感じて頂けたと思います。 このような例からも分かる通り、振動の基礎的事項を知っていれば、 かなりの程度までの振害回避の予防手段を講じることが可能なのです。
振動は言い換えると“往復運動”とも言えます。 普通、一定方向の力が作用すれば、その物体は力の作用する方向に運動を続けるはずですよね。 しかし、往復運動の場合には静止する瞬間があるので、その運動を止めようとする“逆方向の力”が かかっていることが分かると思います。
釣鐘の例では、少年が1方向へ押しているのに釣鐘が往復運動をするのは、“釣鐘に作用している重力”が、 釣鐘の運動方向と逆方向の力になって、動きを止めようとしているからです。 この逆向きの力“復元力”が、往復運動の一因です。
振動にはもう1つ、ニュートンの法則による“慣性力”が関わってきます。
物が動けば、質量に加速度を掛けた“慣性力”が生まれるからです。
つまり、木や鉄、コンクリートなどの弾性体でできている構造物は、